A-Lab Artist Gate 2017

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 7月17日まであまらぶアートラボ(尼崎市)で開催されていた「A-Lab Artist Gate 2017」。新人作家の登龍門的な位置づけのグループ展といった趣で開催されてまして、今回は大学や大学院を卒業して間もない人たち(稲垣美侑、井村一登+makership、木原結花、木村友美、榑松夏実、濱口芽、吉野滉太)が選出されていました。

 

 出展作品は絵画やオブジェ、映像、インスタレーションetc.と多岐にわたっており、新人作家の多様な表現を(様々な制約はあれど)一望できる機会となっていたとさしあたっては言えるでしょうが、個人的にはその中でも木原結花女史の《行旅死亡人》シリーズに瞠目しきり。この作品、昔の新聞に掲載されていた身元不明の行き倒れ――作品タイトルの「行旅死亡人」はそのような死者のことを指すそうで――の記事の切り抜きと、そこに書かれている身体的特徴や服装の描写をもとに様々な写真をコラージュして作られたそれっぽい人の写真とを並べて展示するというもので、今回は老若男女12人分制作されていました。個人的には死者、それも「行旅死亡人」という存在をテーマにするという目の付けどころがなかなか良いところをついてるなぁと思うことしきりでしたし(理由は後述)、駄コラ・クソコラであることを割と隠さない画質のコラージュも、古新聞の画質と揃えているように見受けられ、意図的なのかそうでもないのかはともかくとしてこの手の作品としては上手いなぁと思うところ(画質が良かったら違和感が先に立ってしまうでしょうし)。しかも木原女史、大阪芸大出身だそうで、ART OSAKA後の飲み会の席でその事実を聞かされて驚くばかり。かような作品だから京芸か精華大OGとばかり(ry

 

 ――というわけで、自治体が運営しているアートスペースでの、「若手作家をフィーチャーする」という公共事業的性格(?)の強い趣旨のもとで開催された展覧会にほとんどあるまじき不穏さを全開させていたこの《行旅死亡人》シリーズ、個人的には発想や作品の形式という点において、これはむしろ欧米のアートアクティヴィストの活動や作品に近いものがあるなぁ日本人でここに注目する作家って昨今意外と珍しいなぁと思うことしきりでしたが、ここで木原女史が行旅死亡人という存在に着目していることが結果としていかなる射程を含んでいるかに注目することが必要でしょう。上述したように行旅死亡人とは身元不明のまま行き倒れて亡くなった人のことですが、現在の日本でも年間数百人〜数千人単位で存在していると言われている。木原女史がそういう現状とどの程度切り結ぶことを意図してこのような作品をものしたのかは(彼女と実際に会っていない以上)判然としませんが、少なくとも「死」や「死者」の存在を絶対化し、そのことをもって公共性の基礎に据えるというような――レヴィナスあたりの哲学を俗っぽくしたような――態度が排除している何かを明るみに出していることは間違いない。