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上出惠悟「熊居樹孔」展

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 Yoshimi Artsで6.18~7.10の日程で開催の上出惠悟「熊居樹孔[ゆうきょじゅこう]」展。九谷焼の窯元である上出長右衛門窯の後継者として、九谷焼をベースにしつつも狭義の工芸にとどまらないコンセプチュアルで知的な想像力を豊かにたたえた作品を多くものしている上出氏ですが、今回は、昨年突如主題として導入されたという「熊」をフィーチャーした個展となっています。

 

 もともと近代以前の日本美術で熊が描かれたものが(その生息範囲の広さや人間の生活圏との近さに比べて)皆無に近いのはなぜなのかという疑問から熊への関心を強めていったという上出氏。そこから日本の昔ながらの民俗や山岳信仰について造詣を深め、作陶にフィードバックしていったといいますが、実際の出展作は以上のような過程や遍歴からイメージされるような泥臭さや民藝感が押し付けがましく露出したようなものとは限りなく違ったものとなっており、そこは個人的にきわめてポイント高。

 

 九谷焼の歴史に裏打ちされた歴史性を縦軸(時間軸)に、陶芸という行為や作品の持つトランスナショナリティや同時代性を横軸(空間軸)にした上で、双方の交点を陶磁器によって再演・再提示(representation)するところに上出氏の作品の魅力があるわけですが、熊やその周辺の民俗的な諸相(山岳信仰や異界観など)を新たな縦軸として提示した今回の出展作は、どの作品も熊と人間との接点に陶芸を置いて再演するというコンセプチュアルなロジックによって貫徹されており(個人的には熊の手をモティーフにした作品がなかなか良かったです)、それが今後どのような展開を見せていくことになるのか、目が離せないところです。