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上瀬留衣「一昨日見に来てください -oxymoron-」展

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 Gallery OUT of PLACE NARAで2.26~3.13及び3.31~4.10の日程で開催されていた上瀬留衣「一昨日見に来てください -oxymoron-」展。大阪を中心に活動している上瀬留衣女史の、同ギャラリーでは初となる個展。家/家族や自身の生理的な感覚、記憶などをベースとしたインスタレーションを、ときに自分自身を作品中にそのまま嵌入させて作るという作品をここ数年制作し続けている上瀬女史ですが、今回もその基本的なラインに沿った作品が出展されていました。

 

 一般論としてこのような傾向の作品の場合、密室感というか、自分だけが分かればいいというようなものに逢着してしまいがちであり、インスタレーションという表現方法を採用することがかような自己意識のループ構造を強化してしまうことが往々にしてあるわけですが、上瀬女史の場合、表現する「私」と物との関係を直接表現することに代えて、「私」が設定した物同士の関係の中に表現される「私」を入れるという入れ子構造を採用することで、自分自身を巧みに対象の位置に滑りこませている。それ自体は以前の個展でも行なわれていたことですが、今回の「一昨日見に来てください -oxymoron-」展ではそれが同傾向の近作よりも一段(以上)高いレヴェルでできていたことは、ここで指摘しておく必要があるでしょう。今回の場合、自分自身が作中に嵌入されていないことで、入れ子構造がさらに際立っていた。

 

 ところで展覧会タイトルの「oxymoron」は、「撞着語」「自己矛盾」という意味とのことですが(「一昨日来てください」はその意訳である)、上瀬女史の作品は自分自身の生理的な感覚から出発しつつも、様々なレヴェルにおける「oxymoron」を作る/経ることで、自分自身がそのような感覚によって作られた世界──彼女自身は《現実世界とはまた別の「どこか」》と表現しています──に過剰に固着することとは違った形で、自身の生理的な感覚と関係を結び直すことを思考/試行していることになるわけで、(“現代アート”においても過剰なセラピー化が進む中では)際立って貴重な試みであると言っても、あながち揚言ではありますまい。